有志の会

語ろう「数理解析」

〜 Let's Enjoy Mathematical Sciences! Fun! Fun! Fun! 〜


趣旨説明

「数学には批判的な研究と古典的な研究があって‥‥」と,木下素夫先生が講義の際に語られたのを今でも鮮明に覚えています。学部数学科2年生対象の代数の講義でした。数学は,それ自身で自立的に進化/深化を遂げる事が出来る学問である事は今更言うに及びませんが,「外の世界」との協同を求められて久しくもあります。「諸科学の批判的研究」としての数理科学は,多様な世界をなす数学の一面であり,理系・文系を問うことなく普遍的な価値観を提供してくれるものと確信しております(文責:名和)。

具体的な現象を理解し応用するための数学解析,そこから生まれた純粋数学的な興味に突き動かされた研究,将来的に数学/数理科学として整備されることが 期待されるような様々な現象の探求…。数学の世界は,間口,奥行,その裾野も本当に広いと感じます。これらの研究に関わっておられる方々と,ささやかながら,最近の研究動向やその数学的な課題について議論する場となればと思っています。

令和元年を迎えて

今年2019年,世界計量記念日である5月20日に,新しい SI 単位が施行されました。物理学の基本法則に現れる物理定数などのいくつかの重要な数値が新しく定義値となりました。それらは,プランク定数,ボルツマン定数,アボガドロ数,電気素量です。1983年に光速が定義値となって以来の大改定ではないでしょうか。キログラム原器は廃止され,真空の透磁率は定義値ではなくなり,少々奇妙な印象を拭えなかったアンペアの定義も廃止されました。これらの物理定数は桁数も多く単純な数値ではないことは,それだけ現代社会が高度な技術に支えられているということでもあり,普段は意識しないところで,純粋な科学理論との結びつきが強くなっていることの証左なのかもしれません。 ここに書かれているのは,もっと早くに公開しようと準備していた文章なのですが,令和になって早5ヶ月が過ぎ去ろうとしています。今でも元号なるものを使用しているのは日本だけと聞いておりますが,ともかくも,新しい時代の幕開けです。自分自身でも,多分にバイアスがかかった見方であると分かってはいるのですが,我々を取り巻く諸々の変化は,何にやら元号と関係しているように見えてなりません。一休禅師の言われる「やまびこ」でしょうか。

 ありといえばありとや ひとのおもふらむ,こたえてもなき やまびこのこえ
 なしといえばなしとや ひとのおもふらむ,こたえもぞする やまびこのこえ

気になって少し調べてみました。シュレーディンガーが量子力学に関する有名な論文3篇を発表したのが,昭和元年に当たる1926年(そして今年,プランク定数は定義値になりました)。1912年の大正元年はストックフォルムオリンピックの年(NHK「いだてん」で有名ですね)。その前の年1911年1月には西田幾多郎の「善の研究」が発表され,12月は超伝導が発見されました。ちょっと時を下りますが,1915年はアインシュタインが一般相対性理論を発表した年です。昭和の終わり頃はというと,製造業不況を乗り越えてバブル景気へ向かって行った時代。数学においては重要な概念や技術が発明/発見された時期でもあったような印象を持っています(個人的バイアス,かなり強めです)。しかしながら1989年の平成元年は,共産主義国家崩壊の兆しが見え始め,天安門事件,そしてダライ・ラマ14世がノーベル平和賞を受賞し,浮かれたバブル景気も1991年の崩壊まであと2年と,どことなく妙な空気が漂い始めた年でもありました。平成は,確かに世界大戦と呼ばれるような戦争はなかったものの,大地震やテロが各地で起こり,日本も例外ではありませんでした。失われた20年と言われた時期もありの日本でしたが,2010年「はやぶさ」の帰還,2011年は女子サッカーの快挙と明るい兆しも。振り返ってみると,山あり谷ありの激動の時代であったような気がします。思い起こせば,多くの日本人がノーベル賞を受賞した時代でもありました。さて,令和の時代。「君は,刻の涙を見る?」
                  …… 標題とあってない気もしますが   (文責:名和)

18年目を迎えて


『語ろう「数理解析」』は17年前の2002年に「名大多元数理解析セミナー」としてスタートし,今年で18年目を迎えました。セミナー運営メンバーの入れ替わりはありましたが,この長きに渡って続けてこられましたのも,ご講演下さった方々とご参加下さった皆様のお陰と,深く感謝しております。本当にありがとうございました。

2019年度の第1回セミナーは遅めに,最近では恒例のようになってしまいましたが,もう四ヶ月近く前の6月29日に京都大学吉田キャンパスにおいて開催されました。運営メンバーの皆が忙しい生活を送る中,無理をせずにのんびりと,だらだらと続けて行けたならと思う今日この頃です。公開がすっかり遅れてしまっている講義録も近々公開の予定のはずです。

 これからの世の中は,AI などの発展と相まって,数学を含む学問の世界全体も大きく変わって行くことは確実です。この先,若い人たちは今までとは全く違う新しい世界を見ることになるのでしょう。年老いた者にとっても,少年時代に夢見た世界がいよいよ実現される,そんなワクワク感もあったりします。歳を重ねても,初心を忘れることなく好奇心を糧として,多様なテーマに触れられる場であればと願うものです。

何やらセミナーロゴのような趣も出て来ましたが,今年も次の二つの句で締めたいと思います。

            子曰、學而時習之、不亦説乎、有朋自遠方来、
        不亦楽乎、人不知而不慍、不亦君子乎。

    (学問をすること、そして実践をとおして学問を身につけていくこと、これは無上のよろこびだ。
     しだいに同志ができ、見ず知らずのその同志たちが集まってくる。こんな楽しいことはない。
     人に認められようが認められまいが、そんなことは気にかけずに勉強を続ける。
     これが本当の君子である。)久米旺生訳

   行く末に、宿をそことも定めねば、踏み迷うべき道もなきかな。


2019年 運営メンバー一同


語ろう「数理解析」12月のセミナー@京大

下記の要領でセミナーを開催いたしますので、ご案内申し上げます。
皆様のご参加をお待ちしております。


日時 令和元年12月21日(土) 15:00〜
場所 京都大学 総合研究10号館 317セミナー室 (3階) ※下記注意参照
講演者 日野 正訓 氏 (京都大学)
講演タイトル 拡散過程が定める次元
講演概要 拡散過程が定めるノイズの重複度を表す「マルチンゲール次元」の概念は,実質的に1960年代には議論されており,典型的な状況では空間次元に一致する. しかし,フラクタル集合のような特異集合上の拡散過程の場合は事情が異なり,次元の定量的な情報を得ることは非自明な問題である. 本講演では,マルチンゲール次元の定量評価に関する従前の結果と最近得た結果を紹介し, 時間があれば本題と密接な関連を持つ「可測リーマン的構造」の概念とそれを用いた(確率)解析に関する今後の展望について述べる.


■ 会場へのアクセスは、 こちらをご確認下さい。(60番の建物)

※注意:
当日会場となる建物が休日のため施錠されます.
そのため,参加される方は14:30から14:55までの間に
「総合研究10号館」北西側(今出川通側)の入口より建物にお入り頂きますようご協力をお願いします.
もし万が一遅れるような場合は,(できれば14:55より前に)石渡,名和あるいは矢ヶ崎まで
メールにてご連絡頂ければ,対応するように致します.



今後の予定

未定

その他

■ 過去の講演ログはこちら.

● webを大学外に移しました。(2009年2月)

ノート


セミナー運営メンバー
  石毛 和弘(東京大学大学院数理科学研究科)
  石渡 哲哉(芝浦工業大学システム理工学部)
  小川 知之(明治大学先端数理科学研究科)
  坂上 貴之(京都大学大学院理学研究科数学教室)
  名和 範人(明治大学理工学部)
  松本 剛(京都大学大学院理学研究科)
  矢ヶ崎 一幸(京都大学大学院情報学研究科)
(五十音順)


セミナーについてのお問い合わせは、上記メンバーか以下のメールアドレスまで お問い合わせ下さい。

(現管理者:石渡(暫定))

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